会計のキャリアを重ねた自信を糧に、アメリカ社会で自立して生きる

山田 由美  YAMADA Yumi
会計士

2019年5月31日(金)、津田塾大学OG・TLC公開講座「コロラド州、テキサス州で会計士として学んだこと」が千駄ヶ谷キャンパスにて開催されました。TLCは本学の卒業生で、士業(弁護士・会計士・税理士等)に就いている有志のメンバーで構成され、2013年に発足しました。山田由美氏は結婚後に渡米し、大学で会計学を学び直した後、2州で会計士としての豊富なキャリアを重ねた経験をもとに講演。リアルな苦心談、成功談を交えながら、津田塾大学で培った学びを土台にアメリカ企業で働く充実感を披露しました。海外での勤務を志望する学生や受験生、外国でのキャリアアップを望む社会人にとっても有意義な内容だったのではないでしょうか。会場にはOGも多く、講演終了後の質疑応答では、津田塾大学を盛り上げていくためのプランも話し合われるなど、津田塾大学への思いに満ちた空気に包まれました。

山田 由美氏講演ダイジェスト動画(講演内容の詳細は下記テキストをご覧ください)

【山田 由美氏講演詳細】

突然の渡米を契機に、会計学を学び直す

津田塾大学を卒業後は外資系の金融会社の日本法人に就職しました。バブル景気のさなかで、入社前に香港で1か月の研修があるという時代でした。信託部勤務でしたので、国際関係学部で学んだ知識を直接使うということはなかったのですが、いま振り返ると自分にとっての国際的な関係を考えながら学び、業務に励んでいたのだと思います。しかし、会計学を取っていなかった私は、現場で国際業務に従事する中で、その分野の専門知識に欠けているなと感じていました。
そんな日々の中で夫のアメリカの大学への留学が決まって、私も一緒に渡米することになるのですが、ビザの関係で自分がアメリカでは働けないという事態に直面したのです。いきなり住むことになったテキサス州のラボック市で「いままで24時間働いていたような私が働けない、何をしよう」と考えましたが、就労ビザが下りるまで学生に戻るしかないな、と思いました。その後、修士課程を修了した主人と共にコロラド州のデンバーに移りました。金融会社で勤務していた頃に実力が欠けていると感じていた会計学は、やはりどの国でも通じる学問だと痛感。大学で4年間学んで修士を取って、公認会計士の試験を受ければアメリカでも通用するのではないかと考えるようになりました。

 

「実力社会アメリカ」で築く、会計士としてのキャリア

そして奨学金をもらって夜学で修士も修了したのですが、アメリカは、実社会での経験がないと仕事が見つかりません。そこでビッグファームと呼ばれる4大会計事務所の面接を受け、その一つに就職が決まって、20代の大学生に紛れて監査の仕事を始めました。でも監査の仕事は難しかったです。言語の壁もありましたが、監査の仕事の流れがわからないと、どこにポイントを置けばいいのかわからない。3年間勤務しましたが、会計の実務を知った上で監査業務をした方がいいと気付いて、医療保険会社に転職し、5年間を過ごしました。
その会社では、上の人にすぐ何でも言えるオープンな環境に驚き、逆に自分がないと認めてもらえない体験もしました。そして会計と財務を知る先輩に仕事の進め方と実務をたくさん学びました。皆さんもそれぞれにご自分のキャリアを踏まえて模索されていると思いますが、メンター(新入社員などの精神的なサポートを担う専任者)ができるほどの人ですと、相手が、どういうところでつまずくのか、次のステップへ行くまでどういうトレーニングをさせたらいいかを把握した上で随時教えてくれます。私はそのようなメンター的な存在のおかげで、会計全般、さらに仕事自体に広がりをもつことができました。そこで、ネットワークはとても大切だと知って、そのようなネットワークの中に乗り込んでいく勇気も大切だと実感しました。 
その後、テキサス州の州都・オースティンに移るのですが、会計業務の経験を買われて現在勤めている組織に入りました。アメリカ政府へのクレームを評価する会社ですが、ここでもまず驚いたのは、最高責任者やCFOとストレートにすぐ話せたことです。何か自分で変えていきたいと思えば直に話せます。その代わりシビアで、プロジェクトでミスをすると大きな責任を負うことになります。そして働く上で一番有難いのは 、自分の能力を発揮できればきちんと評価してもらえる点です。また、上下関係でのしがらみがなく勤務できることも大きいです。現在も、デンバーの勤務先でもそうでしたが、ローカル採用のため英語で仕事をするハンディはあるものの、働く意欲と会計の能力があれば誰でもやっていけると思っています。

 

津田塾大学で培われた国際人としての土台

私は津田塾大学を卒業してからこのようなキャリアを重ねてきました。今日もまた久しぶりにアルバムを開いて見てみると、皆さん自立されて羽ばたいている方が本当に多いなと思います。
いまアメリカで働いていて国際人って何だろうと考えると、非常にフレキシブルでいられることが一つの要素かなと思います。それまで培ってきたことを活かしながら、どのような状況になったらどう対処すべきか、皆さんも毎日そのような選択に直面されていると思います。
私も様々な質問を受けますが、まず「どうしたらいいと思いますか?」と訊きます。スタッフで 分からないことが多い人には、自分で気づかせるにはどうしたらいいか、と考えます。そこでは人間として、その人をいかに育てていくかを考えるので、日本人ということも忘れて仕事をしています。仕事を終えた後は充実感がありますし、そのような達成感も国を超えて感じられるものだと思います。
いまの会社は出身国で言えばアジア人も増えていますが、みんな国際人として、国の壁をこえて一丸となって会社のために働く意識が高いと思います。
津田塾大学を出て、いまある自分を見つめてみると、そのような環境の中で自立できている。津田塾大学で学んだことがどう役立っているかを考えたとき、そういう土台を培っていただいたと思って感謝しております。